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よしなしごとダイアリー

日常のあれこれをああでもないこうでもないと考える

トリハロメタン2

トリハロメタン発ガン性が疑われることになったそもそもの実験とはいかなるものか。


「最初に水道水中のトリハロメタンを見つけたのはオランダ・ロッテルダム水道局のルークで、1972年のことである。彼はライン川の水からトリハロメタンのひとつであるクロロホルムを測定し、それが河川水を塩素処理して生成することを突き止めた。分析機器の発達によって、それまで問題にされていなかった微量物質が表舞台に登場し始めるきっかけともなる発見であった。しかし、このトリハロメタンが社会問題となったのは、さらに2年後の米国において、である。


1974年11月8日、米国環境庁(USEPA)は、ニューオリンズ市の飲料水の中から有害なクロロホルムが検出されたことを発表するとともに、飲料水中の発ガン性物質について全国的な調査を開始することを明らかにした。(中略)


USEPAは翌1975年に全米113都市において水道水中の有機物質調査を開始した。同時に米国ガン研究所(NCI)では発ガン性に関する動物実験が開始され、クロロホルムによる発ガン性を確認した。」


ここでようやく発ガン性が出てまいりました。


「さらに1977年米国アカデミー(NCS)等はNCIの実験データからトリハロメタンの危険性を推定し、人の一生涯における危険率を計算した。その結果はクロロホルム1μg/ℓに対し水1リットル70年間飲む場合には1.7×10のマイナス6乗の危険があるというものだ」


この結果を受けてUSEPAは1976年に水道水中のトリハロメタンの最大汚染濃度を0.10㎎/ℓと告示します。しかしここの数値は現実とのバランスをとった結果でした。


この数値においてもAWWA(米国水道協会)の提訴によって異議申し立てが成されました。1983年に和解が成立し、トリハロメタン基準を確立しました。しかしこれは対応処理技術を施してもなお基準値を達成できない場合は適用免除されるというのもので、USEPAの大幅譲歩によって骨抜きとなってしまったのでした。


1984年WHOが飲料水質ガイドラインを発表、トリハロメタンの基準も載っています。おなじ米国の動物実験データを使用しているにもかかわらず、この実験に不備があるとしてマウスの数値を採用せずに、ラットのみのデータを採用しました。結果WHOの基準値は30μg/ℓとなっています。


その後1993年には基準値は200μg/ℓ(0.2㎎/ℓ)と大幅に上がりました。WHOの飲料水ガイドラインは国際ガン研究所(IARC)の発ガン性物質分類を前提とするものです。


「実のところ、WHOの基準の0.2㎎/ℓと言うのはそれほどとっぴな値ではない。当初から米国の実験に批判的なカナダでは独自の危険評価モデルを使って、トリハロメタン基準を最大0.35㎎/ℓとさだめているし、オーストラリアでは1㎎/ℓである」


「日本におけるトリハロメタンの平均濃度は、3箇所を除いて0.080㎎/ℓ以下である。この濃度を先の米国動物実験データから得られる危険率で推定すれば、発ガンリスクは最大一生涯10万分の1.4程度である。WHOの解釈に従えば一生涯10万分の0.4以下、他のDBPを加味したとしてもその数倍程度と見積もってよい。誤解をおそれずに言えば、毎日びくびくして生きなければならないような濃度ではない」



参考文献「あぶない水道水」有田一彦著。