よしなしごとダイアリー

日常のあれこれをああでもないこうでもないと考える

続トランス脂肪酸

数年前トランス脂肪酸について調べましたが、今年になってアメリカでトランス脂肪酸を規制することになったと言う動きがありました。


その後の調査結果などをチェック。


http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/hotnews/archives/343498.html
「悪玉『トランス脂肪酸』摂取でCRPが7割増:炎症性因子や接着分子介して動脈硬化起こすメカニズム確認」(2004.11.12)


上記の記事によれば、トランス脂肪酸の摂取量をどうやって測るのかというと
「研究成果を報告したのは、Harvard School of Public HealthのEsther Lopez-Garcia氏らの研究グループ。同氏らは、米国看護師健康調査(NHS)登録者のうち、1990年の血液採取時点で43〜69歳だった健康な女性727人を対象とした。トランス脂肪酸の摂取量は、アンケートにより、調理油と食卓用油の商品名と、マーガリン、マヨネーズ、フレンチフライ、市販の焼き物、ファーストフードの揚げ物の摂取状況を調査した。」


マヨネーズなんて植物油じゃないかとお思いでしょうが、アメリカでは卵黄を使わないマヨネーズ(またはマヨネーズタイプドレッシング)にはトランス脂肪酸を含むものはあるらしいです。


2004年の時点では区別されていない(と思われる)のですが、トランス脂肪酸には多くの種類があり、主なものに「バクセン酸」と「エライジン酸」があります。


http://www.nfri.affrc.go.jp/yakudachi/transwg/kagaku.html
「油脂とは」 (独立行政法人 食品総合研究所)


「牛などの反芻動物の胃内に共生するバクテリアは、シス型の不飽和脂肪酸をトランス型に変換する特殊な酵素を持っています。このバクテリアが産生するトランス脂肪酸は主にバクセン酸C18:1(11-trans)(図5左)です。一方、硬化油等には、エライジン酸C18:1(9-trans)(図5右)など、多種類のトランス脂肪酸が含まれています。牛肉や乳製品には、2-5%程度のトランス脂肪酸が含まれていますが、その大部分はバクセン酸です。バクセン酸は、エライジン酸とは不飽和結合の位置が異なる位置異性体です。」
「摂取されたバクセン酸は、生体内にある酵素の働きで、共役不飽和脂肪酸の一種に変換されることがわかっています。硬化油には、バクセン酸以外のトランス脂肪酸が多く、硬化油に含まれるトランス脂肪酸の大部分は、生体内でも共役不飽和脂肪酸に変換されません。このように乳製品に含まれるトランス脂肪酸組成や生体内に吸収されてからの動態が、硬化油のトランス脂肪酸とは異なることから、乳製品に含まれるトランス脂肪酸が健康に与える影響も、硬化油中のトランス脂肪酸とは異なると考えられています」


バクセン酸については危険はなさそうです。
さて、問題はエライジン酸に移ります。


http://www.nfri.affrc.go.jp/yakudachi/transwg/q_and_a.html#q10
トランス脂肪酸Q&A」(独立行政法人 食品総合研究所)


「(10)トランス脂肪酸のうち何を調べているのですか?

 トランス脂肪酸には多数の種類があります。植物油の水素添加で最も多く生じるトランス脂肪酸は,炭素数18で二重結合が一つのものです。水素添加に伴い二重結合がいろいろな位置に移動するため,複数の異性体が含まれます。そのうち代表的なものは、エライジン酸(そのシス型はオレイン酸)です。 トランス脂肪酸の分析において、全ての異性体を測定することは不可能に近く、エライジン酸のみを測定している報告もあります。しかし,エライジン酸以外のトランス脂肪酸の多い食品もあり,必ずしもエライジン酸が主成分とはいえません。
 現在、食品総合研究所では、これらの量の少ないトランス脂肪酸についても分析を検討しています。 各種のトランス脂肪酸は、ヒトの体内での代謝が異なり、作用も様々なものがあると考えられます。トランス脂肪酸ごとの悪影響の程度についても、現段階ではわかりません」



「(12)BSEメチル水銀など次々に危ない物が報道されますが、トランス脂肪酸BSEメチル水銀と、何かちがう点がありますか?


 BSEメチル水銀といった危害要因と決定的に異なるのは、トランス脂肪酸生活習慣病の原因となることが、はっきりしていることです。これは疫学調査から明らかであり、トランス脂肪酸を減らせば、減らすだけ動脈硬化などのリスクも下がります。もちろんトランス脂肪酸に限らず、脂質全体の摂り方を見直すことも重要です。 」


マーガリンなど油脂に水素添加し固形化したものには不飽和脂肪酸飽和脂肪酸の中間であるトランス脂肪酸が含まれるわけです。エコナみたいな中鎖脂肪酸の油もトランス型が含まれます。トランス型を取り除く製法もあるそうなので、安全志向の高まる消費者向けに一考を要します。


生活習慣病の原因となることが疫学調査ではっきりしている」とまで言われていますが、シスとトランスの区別をつけたのも最近ならバクセン酸とエライジン酸そのほかの区別をつけたのも最近。そこんところはどうなのか、疫学調査も今後の動向を待ちたいところです。


http://www.nfri.affrc.go.jp/yakudachi/transwg/transhyo.html
「主なトランス脂肪酸」より
「9-エライジン酸 (9-elaidic acid) C18:1  所在:乳脂、牛脂、人乳など」
およよ。人間にもエライジン酸があるですよ。


トランス酸よりまっすぐな不飽和脂肪酸(動物性脂肪)のステアリン酸も日常的に摂取してるのだからなにをかいわんや。