そして誰もいなくなった
介護売り場に引き継ぎをして、家庭用品売り場に移ったのが去年の11月でした。
後任の方もよくやってくれていると思っておりましたが、先日転職を考えて面接を受けて来たという。
「ここの給料ではやっていけないと思って」
「う~ん、サブで働くならいいとこだと思うけどね、時給が安いのはいかんともしがたい」
「そうなんですよ。先月ボーナスが出て、一年で一ヶ月分って聞いてたから、夏のボーナス、半月分くらいは出るのかなー、と思ったら、1万円。私シングルなんで、こんなんじゃ老後が不安で不安で」
「最初の半年じゃそんなもんよ」
「でね、正社員になれるって聞いてたんですけど、Aさんに聞いたら『若い人でも早くて5年』、ってね、私の年じゃいつになるかわからないですよ。」
「ほんとほんと」
「加古川に新しい介護施設ができて、デイサービスと有料老人ホームの求人があるんで、そこに行ってみたんです。やっぱりこういう仕事がしたいんですよ。正社員で採用してくれるっていうし、給料が全然違うんですよ。でもね、デイはもういっぱいで、入浴介助もある有料老人ホームの方はどうかって。いま入居者は三割程度なんですって」
「仕事きつくない?夜勤もあるんでしょ?」
「もう、ここはすごく楽なんですけどね、私病気もしたので、健康面についてはもう報告してるんですが、慣れるまでは夜勤のない準社員ということで始めてみて、半年くらいして正社員になるかどうか決めたらいいって言ってくれて」
「それはいい話じゃないの!法律では二週間前に通告したら辞められるのよ、あとは心配しないで、転職するのがいいわ、おめでとう」
「介護売り場に残ったSさんがなんて言うかです」
「そりゃ知ったこっちゃないから~。自分のことが一番大事よ」
「スズキさんがまた呼ばれたりして」
「いや、それはないわ。あ、ABさん(私の前に介護売り場に所属していた人。私同様に追い出されて別の売り場にいる)もないわね」
ABさんもKさんもかつて介護売り場だったが、今は別の売り場である。わたしも追い出されたので、引継ぎしたKさんもやめることになるしで、そして誰もいなくなった・・・・。
あとは野となれ山となれ。
Sさんの一人天下で好きなようにやったらよろしいがな。