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よしなしごとダイアリー

日常のあれこれをああでもないこうでもないと考える

ひとりぼっちのジョージ

ひとりぼっちのジョージ

「ひとりぼっちのジョージ」(ヘンリー・ニコルズ 早川書房刊)


かつてチャールズ・ダーウィンが進化論を書くにあたって旅をしたガラパゴス諸島。島によってさまざまな形に進化を遂げたゾウガメが暮らしていた。乱獲により(亀の肉はおいしいらしく、生きた食料として船に積み込んだそうである)その数は激減した。


ところが、ピンタ島で絶滅したと思われていたピンタゾウガメが1971年見つかり、ロンサム・ジョージと名づけられた。名前の由来は1950年代初頭にアメリカで人気のあったコメディアン、ジョージ・ゴーベルにちなんでいる。ゴーベルは自身の番組で妻の尻にしかれた憐れな夫の役を演じており、その境遇が相通ずるところがあったのだということだ。


世界一有名な亀の誕生である。自然保護活動を象徴する立役者として、こういった動物を”フラッグシップ”と呼ぶのだそうである。パンダなどがその任にふさわしい容姿で最初に思いつくところであるけれど、爬虫類ながら寂しげな表情といい、好戦的でない様子といい、世界に1頭という希少価値とあいまってジョージも立派なフラッグシップである。


そんなこんなで興味深い本でございました。


自然保護の観点からジョージの繁殖活動についての記述が詳しく、ページも多く割かれています。メスの亀に興味を示さないため、ホモ疑惑もありましたが、おそらくは周りに同種の生き物がいないために生殖行動を見たことがなく経験不足なのではないかと察します。それでもなおイイ線までいった研究がありました。スヴェヴァ・グリジオーニというスイス人女子大学院生がゾウガメのオスの生殖器官を刺激して精液を得ることにチャレンジし、成功寸前まで漕ぎ着けたのでした。博士課程に進むためヨーロッパへもどることになって中断せざるをえなかったというのがたいへん残念です。

ガラパゴスのナマコ漁のために「ロンサム・ジョージに死を!」という物騒なスローガンで漁師たちがダーウィン研究所を占拠したこともあったそうです。自然保護と漁民の対立も悩ましいところではあります。